相手が養育費を払ってくれない!まずは養育費について理解しよう

相手が養育費を払ってくれない!まずは養育費について理解しよう
目次

養育費の決め方・金額等について

離婚を考えてご相談に来られる方から「養育費の金額で夫との折り合いがつかなくて揉めている。お前(妻)にはお金を払いたくない、と言われた。」という内容のお悩みを大変多くお聞きします。

養育費が継続的に支払われていないひとり親家庭、特に母子家庭の割合は約7割(2021年厚生労働省の「全国ひとり親世帯等調査」による)となっていますので、社会的にも大きな問題となっています。

養育費を払いたくなければ払わないことができるのでしょうか?

いいえ、支払う義務があるのです。
養育費についての考え方や手続きの流れなどを見ていくことにしましょう。

養育費とは

離婚する夫婦の間の子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する衣食住に必要な経費や教育費、医療費などです。
離婚した後子どもと同居しない親は、収入に応じて子どもの監護費用の分担として、子どもの養育費を支払う法律上の義務があります。それは、親の生活に余力が無いとしても自分と同じ水準の生活は保障しなければならない強い義務(生活保持義務)であるとされています。

離婚の理由や原因と養育費の責任は全く別のものですので、親同士の問題とは切り離して、子どもの健やかな成長を考えなければならないのです。たとえ借金があったとしても、原則的には借金の返済よりも養育費を優先すべきとされています。

【民法】離婚後の子の監護に関する事項の定め等
第766条
父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
(扶養義務者)
第877条
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2・3 (略)

取り決め方法

養育費は、離婚後の子どもの療育のために、父母が離婚する前にきちんと話し合って決めておくことが大切です。しかし、養育費が十分に支払われていないことが多い現状を見ると、協議離婚する夫婦において養育費の話し合いが行われていなかったり、話し合いの結果、養育費の取り決めができたとしても払われていない、又は払われなくなったケースが多いのだということになります。とりあえず先に離婚したい、養育費等に関する取り決めは離婚後に行おうと思っても、別居後に話し合いをするのは難しくなってしまいますので、養育費の取り決めは離婚前にすることが望ましいでしょう。

協議離婚の場合

協議離婚の場合は、養育費の取り決めの結果を、強制執行認諾条項付き公正証書(相手がお金を払わない場合に、裁判手続きを行わなくても相手の財産を差し押さえることのできる公正証書のこと)にしておくと、養育費の不払いを心配される方には安心です。

公正証書の形にはできなかったとしても、「離婚協議書」として何らかの私的書面を残すようにしましょう。約束が守られない場合の客観的な証拠になります。離婚する際に取り決めることが出来なかった場合は、子どもを監護療育している親は、離婚後も、子どもが経済的・社会的に自立するまでは、子どもと離れて暮らしている親に対していつでも養育費を請求することが出来ます。

離婚前後どちらにおいても、父母の話し合いで養育費について決めることができない場合は、家庭裁判所の調停手続きを利用できます。離婚調停の中では、養育費の他に財産分与、慰謝料、親権者の決定、親子交流についても取り決めを行うことが出来ます。

養育費の金額について

養育費の金額の決め方

養育費は、離婚後の子どもの養育のために、父母が話し合ってお互いに納得する金額を決めることが大切です。養育費の標準的な金額については、裁判官等の研究によって作成された「養育費の算定表」が参考になり、調停などでも利用されることが多くなっています。

平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について | 裁判所

金額の変更

 養育費はいったん取り決めても、その後、「事情の変更」があれば、増額又は減額について双方が話し合ったり、家庭裁判所に養育費の増額・減額の調停申し立てをすることが出来ます。

「事情の変更」とは、大幅に収入が減ったり、再婚して扶養家族が増えた場合に減額を検討することが考えられます。また、お子さんが進学したり、事故や病気で入院したりして臨時の出費が必要になった時は増額が検討されるでしょう。

公正証書や裁判所で決まった内容が履行されない場合の手続

①履行確保(公正証書は除く)

調停・審判・判決などをした家庭裁判所が、権利者からの申出を受けて、義務者に対して支払をするように勧告する手続き。費用はかかりませんが、支払いを強制することはできません。

②強制執行

⑴直接強制

義務者の財産(不動産、給料などの債権)を差し押さえて、その財産の中から支払いを受ける手続き。

差し押さえの内容

通常の場合、支払期限が過ぎても支払われていない分(未払分)についてのみすることができますが、養育費については、未払分があれば、その分だけに限らず、将来権利者に支払われる予定の、まだ支払期限が来ていない将来分の差し押さえもすることができます。   

受け取ることができる金銭

養育費の未払いがある場合、義務者の勤務先などから差し押さえた範囲内でまとめてうけとることができます。しかし、将来分については、各支払期限がきた後に受け取ることになります。

差し押さえの範囲

養育費については、特例として給料の2分の1まで差し押さえることができます。(通常は原則として4分の1です)

⑵間接強制

債務を履行しない義務者に対し、一定の期間内に履行しなければその債務とは別の間接強制金を課すことを警告した決定をすることで、義務者に心理的圧迫を加え、自発的な支払いを促すものです。具体的には、債務者自身に義務を履行させる(約束の金銭を支払わせる)ために、債務者が義務を履行しないままでいるときには債務者に対し一定の金銭の支払いをすることを命じるものです。

さいごに

養育費は、お子さんの健やかな成長のために親として当然に取り決めるべきことです。離婚届を提出する際には、養育費についてきちんと取り決めておくようにしてください。現在の離婚届の書式には、未成年の子がいる場合、「面会交流」や「養育費」について取り決めをしたかどうかのチェック欄が設けられています。この内容についての解説動画のQRコードも貼られていますので、必ず取り決めをしてから離婚届を提出する意識を持つことが重要です。

お役立ちリンク

こども家庭庁委託事業養育費等相談支援センター

このような取り組みが広がり、ひとり親家庭の子どもたちが養育費をきちんと受け取れる割合が増えることを願っています。


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